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市場感の整理~繁忙期のベストを考える~

7月になり夏真っ盛り、といった感じだ。さらに暑さが増すのか ———— と想像しただけでゾッとする。暑さに弱い私からして見れば、できれば避けてとおりたい季節になる。個人的にはそんな季節感を持っているのだが、アミューズメント業界における7月は、繁忙期スタート!という感じがし例年ワクワクする。とくに今年は、いまをときめく「6.5号機」が続々とリリースされることもあり、もっぱら楽しみな7月である。

さて、本稿では7月8月の繁忙期を迎えるにあたり、いまの市場感を整理していきたいと思う。目的は至ってシンプルで、ベストな布陣で繁忙期を迎えていただきたい。ただそれだけである。

4円パチンコの市場構成比率

まずは、4円パチンコの市場構成比率を確認しておこう。前年同期比にて昨年との比較を行う。では、こちらをご覧いただこう。

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4円パチンコの市場構成比率 図

※週次で集計を行っているため集計期間の月曜日~日曜日の回数は異なっていない。

上段の横棒グラフは今年2月(旧規則機撤去後)から直近週までを集計し、個別集団単位で構成比率をまとめたデータとなる。一方、下段は昨年の同時期データとなる。

では、考察してみよう。

大きな変化、および特徴として読みとれるのが「ミドル」「アマデジ」といったとこだろう。それ以外のセグメントについては、微細な変化としてとらえておく。

「ミドル」プラス5.1pt

「アマデジ」マイナス4.5pt

それぞれのセグメントが入れ替わるような形で変化している様子がうかがえる。現在までのニーズが垣間見えるとこだろう。

この結果をふまえ売場を考えるとすれば、昨年から「ミドル」の売場を5pt増床させ、一方で「アマデジ」の売場を5pt減床させる。こうした、売場の設計が好ましいといえるだろう。

極端な話になるが、貴店のポジションによっては「アマデジ」の売場を無くし「ミドル」の売場で埋める。という戦略もひとつだろう。実際にこのような店舗もチラホラ確認できるようになった。これを奇策と呼ぶのかは別として、このような店舗が出てくるのは至って自然な形であると考えられる。

それは、なぜだろうか。

全国データの数値では、年々「アマデジ」の市場構成比率は減少の一途を辿り、現在では14%を下回るとこまで縮小している。市場客数が100人とした場合、アマデジプレイヤーは14人だけしかいないというわけだ。

もはや、地域3番店以下が狙えるマーケットとして成立していないといえるだろう。したがって、地域3番店以下の店舗であれば「アマデジ」の売場を無くし「ミドル」の売場で埋める、という戦略は至って自然な形といえるわけだ。

このようにロジカルに考えながら、繁忙期にむけベストな売場の設計を目指していただきたい。

20円スロットの市場構成比率

次に、20円スロットの市場構成比率を確認してみよう。

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20円スロットの市場構成比率 図

グラフの読みとりかたについては、先程と同様であるため解説については割愛させていただく。

ここで読みとれる大きな変化、および特徴は「6.0~6.4号機」「Aタイプ」「ジャグラー」といったとこだろう。

「6.0~6.4号機」プラス13.9pt

「Aタイプ」プラス2.5pt

「ジャグラー」マイナス7.1pt

「ジャグラー」+「Aタイプ」マイナス4.6pt

市場構成比率として約10%のボリュームを持っていた「5.5~5.9号機」が撤去され、大きな上昇を見せたのは「6.0~6.4号機」である。ポジティブな事象だが、どうしても消去法感は否めない。一方、大きな下降を見せたのは「ジャグラー」である。昨年は、市場客数の半数以上のプレイヤーが「ジャグラー」を遊技していたが、今年はそれを下回っている。その原因は承知のとおり、供給不足が問題である。その穴埋めとして「Aタイプ」を代替機として活用した店舗も多かっただろうが、現実としてはマイナス4.6pt(「ジャグラー」+「Aタイプ」)となっている。力不足感は否めない。

「6.5号機」の話題で賑わうとこに水を差すようだが、「ジャグラー」の供給不足問題のほうが気がかりだ。遅くとも年内中にはこの問題にケリをつけていただきたい ———— と願うばかりだ。

ただし、ネガティブな話ばかりではない。実は、この問題はチャンスでもあると考えている。

それは「ジャグラー」の市場構成比率が減少したといっても、それでも約47%がジャグラープレイヤーである。ボリュームゾーンを狙え!というマーケティングのセオリーに基づけば狙うべき市場であることに変わりない。

このような理由からご提案したいのは、チェーン店であれば旗艦店、または貴社の地域1番店(もしくは地域2番店)に「ジャグラー」を移動させ、元々集客力がある店舗の求心力を高めていくほうが、チェーン店全体として業績に反映させやすいのではないだろうか。

繁忙期という市場が賑わうタイミングで検討していただきたい。

まとめ

現実としてこのような状況が炙りだされたわけだが、7月8月という時間軸おいては現状の市場構成比率から戦略を設計する他ないだろう。4円パチンコにおいては、とくに心配はしていないが「アマデジ」の売場面積には注意が必要だ。

そして問題は、やはり20円スロットだ。「ジャグラー」の供給不足問題はメーカー様に期待する他ないが、貴社の業績最大化という点ではチェーン店間での工夫が必要だろう。

今更ながらだが、競馬の3連単を当てるかのように「6.0~6.4号機」を購入するぐらいなら、その予算分で中古ジャグラーを1台でも購入するほうが賢明だったかもしれない。

「6.5号機」が、こうした発想の対象とならないことを切に願う。


タイトル :市場感の整理~繁忙期のベストを考える~
発行日 : 2022年7月3日
発行元 : 株式会社THINX
著作名 : 株式会社THINX (データアナリスト 𠮷元 一夢)

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