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TRYSEM CROSS_VOL46(アウトはレガシー、分布が未来を語る― なぜ“初動評価が良かった機種”が消えるのか)

本稿のテーマは明確である。 「アウトはレガシー、分布が未来を語る」。 新機種評価において長年依拠されてきたアウトや粗利といった流量指標は、 あくまで行動の結果であり、行動の質そのものを説明するものではない。 2025年の新機種市場を俯瞰すると、 初動評価が高かったにもかかわらず失速する機種が少なくなかった。 その誤読を生む構造こそ、本稿の問題設定である。

本レポートでは、2025年にリリースされた新機種を対象に、 導入7日間のデータを「盛り上がり」ではなく “定着力”へ翻訳する視点で再整理した。 評価軸として採用したのは、 Rv(勝ち体験)・遊技時間・60分以上割合・15分以内割合の4指標である。 平均値ではなく、分布の左右の質量に注目することで、 機種のポテンシャルを相対的に評価している。

2025年パチンコ領域の最上位は、 e新世紀エヴァンゲリオン17 はじまりの記憶R(総合偏差値74.4)であった。 Rv 7,599、遊技時間 56.5分、60分以上 32.68%、15分以内 15.59%。 これは「入口だけの熱量」ではなく、 短時間離脱を抑制し、長時間層を形成できた構造である。 Exposure→Trial→Engage→Commit の導線が成立した、極めて稀な初動バランスといえる。

一方で、Rvが突出していても15分以内割合が高い機種は、 分布の左側に質量が寄り、評価の再現性を失いやすい。 これは統計学的に「平均値の誤読」が起きている状態である。 勝ち体験は必要条件になり得るが、 十分条件ではない。 定着は、分布の右裾(60分以上)が形成されて初めて成立する。

パチスロ市場ではこの傾向がさらに顕著であった。 上位機種は総じて60分以上割合が厚く、 15分以内割合が一桁台前半に収まっている。 すなわち、 勝敗は一撃の強さではなく、長時間層の設計力で決まった。 Rvは出玉の強さではなく、 「納得して打ち続けられるか」という体験価値として解釈すべきである。

導入初週は外部要因が混入しやすい。 だからこそ評価は一度で確定させるのではなく、 7日→14日→28日と週次で更新する運用が求められる。 これは単なる追加データではなく、 事後分布の更新という統計的思考である。

アウトは結果である。
しかし、未来を映すのは分布である。

15分以内は「拒否」の痕跡。
60分以上は「納得」の証左。

評価は平均ではなく、構造で読む。

2026年、ホールの意思決定はさらに難易度を増す。 だからこそ、短期の流量指標に依存するのではなく、 滞在と分布から島構造を再設計する必要がある。 本稿が提示するのは「唯一の正解」ではない。 しかし、評価軸を更新し続けることこそが、 不確実性の高い市場における最も合理的な戦略である。

THINX-LAB.|TRYSEM CROSS VOL.46(2026.02)

TRYSEM CROSS_VOL46(アウトはレガシー、分布が未来を語る― なぜ“初動評価が良かった機種”が消えるのか)

発行日:2026年02月20日

発行元:株式会社THINX

著作名:株式会社THINX(データアナリスト 吉元 一夢)

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