レポート概要
2024年のパチンコ・パチスロ市場は、高射幸性や高純増を軸とした顕著なトレンドが見られる一方で、市場全体の健全性や持続可能性に課題を残した年であった。パチンコ市場では高射幸性への依存が進み、短期的な成果を上げつつも、長期的な多様性と安定性の欠如が懸念される状況となっている。また、パチスロ市場においても成長が停滞するカテゴリーや、競争戦略が鍵を握る新たな局面が浮き彫りとなった。2025年を迎えるにあたり、これらの課題にどのように対応するべきか。本稿では、2024年のデータを基にした詳細な分析を踏まえ、2025年に市場が直面する課題と展望を総括する。
パチスロプレイヤー創出量:前年同週比
「20S」の遊技者構造を前年同週比で分析すると、「スマスロ純増4枚以上」を中心とする集団の規模が大きく増加した。この結果は、2024年を通じて「高純増」が市場のトレンドであったことを如実に示している。
※以下は「2024年12月30日週」と昨年の同週にあたる「2024年01月01日週」を比較したプレイヤー創出量をカテゴリ別に表したデータ
この傾向は2025年も継続すると予測されるが、一方で注意を要する点も存在する。「6.5号機」と「スマスロ」を合わせた集団の規模は、昨年41%であったのに対し、今年は42%とわずかな増加に留まっている。このデータから、「AT/ART」全体の規模がほぼ一定であることが分かる。したがって、「スマスロ」の売場面積を過度に拡大する戦略には慎重を期すべきである。遊技者全体の42%に向けた提供という基本的な前提を忘れてはならない。
一方で、「20S」市場において最も安定した基盤を形成しているのは「ジャグラー」である。
「20S」プレイヤーの46%が「ジャグラー」を選択している状況から、ライトな遊技を好む層のニーズに応えた居場所が十分に確保されていると言える。このバランスが市場の安定に寄与している点は特筆すべきである。
総じて、「20S」市場は「高純増」を求める層とライトな遊びを求める層が共存する二極化した構造を呈している。この構造を維持しつつ、それぞれのニーズに応じた戦略を展開することが、今後の市場の安定成長にとって重要であると考えられる。特に、過度なトレンド偏重や売場面積の拡大によるリスクを回避し、全体的なバランスを取る視点が求められる。
2025年は、「スマスロ」や「ジャグラー」といったカテゴリーごとの戦略的運用が市場全体の行方を左右する重要な一年となるだろう。
パチンコプレイヤー創出量:前年同週比
「4P」の遊技者構造を前年同週比で分析すると、「ミドル」を中心とする集団の規模が60%から67%へと増加した。この結果は、「ミドル海」の集団を含まず、純粋に「高射幸集団」の増加を示している。このデータは、2024年を通してパチンコ市場が高射幸性に大きく依存していたことを如実に物語っている。
※以下は「2024年12月30日週」と昨年の同週にあたる「2024年01月01日週」を比較したプレイヤー創出量をカテゴリ別に表したデータ
特に年末商戦において、その傾向が一層顕著となり、こうした結果は市場全体の健全性について疑問を投げかけるものであると言えるだろう。高射幸性に特化した市場の動きは、一時的な集客や売上の向上に寄与する可能性があるが、同時に市場全体の持続可能性に重大な課題をもたらすリスクを内包している。
このまま高射幸性一辺倒の状態が続く場合、プレイヤー層の偏りが進むことで市場の多様性が損なわれる恐れがある。また、長期的な視点で見たときに、こうした状況がホール運営の安定性や業界全体の信頼性に悪影響を及ぼす可能性も考えられる。そのため、2025年のパチンコ市場においては、依存的な構造を是正し、より健全で持続可能な市場環境を構築することが急務であると言える。
結論として、「4P」の遊技者構造における高射幸性の増加は、一時的な成果として評価される一方で、長期的な市場の安定性に対するリスクを孕んでいる。この状況を踏まえ、業界全体が高射幸性依存から脱却し、多様なプレイヤー層を取り込むバランスの取れた市場形成に向けた取り組みを進める必要がある。2025年は、こうした構造的課題に対応するための具体的な施策を講じる重要な一年となるだろう。
まとめ
2024年の市場データは、パチンコ市場とパチスロ市場がそれぞれ異なる構造的課題を抱えていることを如実に示している。パチンコ市場では、高射幸性市場における延べ遊技者割合が前年同週比で60%から67%へと増加した。この結果は、パチンコ市場全体が高射幸性に強く依存していることを反映しており、特に年末商戦でその傾向が一層顕著となった。この状況は短期的な集客や売上の向上には寄与しているものの、市場全体の健全性や持続可能性に対する疑問を生じさせている。高射幸性一辺倒の市場構造は、プレイヤー層の偏りを助長し、多様性の欠如や市場全体の安定性への悪影響を及ぼす可能性が高い。したがって、2025年においては高射幸性依存からの脱却が急務であり、より多様で健全な市場環境を構築するための施策が必要である。
一方、パチスロ市場においては、「6.5号機」と「スマスロ」を合わせた集団の規模が前年の41%から42%へとわずかな増加にとどまった。これは、パチスロ市場全体の遊技者構造に大きな変化が見られず、ライトユーザーとヘビーユーザーのバランスが比較的安定していることを示している。しかしながら、「スマスロ」のコモディティ化が進行しており、一定の規模から成長が停滞している点は大きな課題である。この現象は、個別店舗における競争戦略において、規模の優位性や運用の効率性がますます重要になっていることを示唆している。
「20S」市場では、「スマスロ純増4枚以上」を中心とする高純増機が市場のトレンドであり、2024年を通じて集団の規模が大きく拡大したことが特徴的であった。しかし、この拡大に伴い、過度な売場面積の拡大は慎重に検討されるべきである。遊技者全体の42%に向けた提供という前提を忘れず、適切なバランスを維持することが求められる。一方、「ジャグラー」は「20S」市場で最も安定した基盤を形成しており、46%のプレイヤーに支持されている。この結果は、ライトな遊技を好む層のニーズを的確に捉えた結果であり、市場全体の安定性に寄与している。
総じて、2025年のパチンコ・パチスロ市場における課題は、短期的なトレンドや一部カテゴリへの依存から脱却し、市場の持続可能性を確保するための戦略的な対応である。パチンコ市場では高射幸性依存を再検討し、プレイヤー層の多様性を拡大する施策が不可欠である。また、パチスロ市場においては、コモディティ化への対応とともに、ライトユーザーとヘビーユーザーのバランスを保つための運営戦略が求められる。これらの課題を解決するためには、業界全体が課題意識を共有し、実効性のある施策を講じることが必要である。2025年は、こうした市場構造の課題に対応し、持続可能な成長を実現するための重要な一年となるだろう。
タイトル :2025年の市場展望~データで読み解くパチンコ・パチスロ市場の課題と可能性~
発行日 : 2025年01月06日
発行元 : 株式会社THINX
著作名 : 株式会社THINX (データアナリスト 𠮷元 一夢)
※本書を無断で複写複製、転載、データ配信